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オレンジ宇宙制作室

2018年7月21日

 電車の中で隣に座る人の手の甲に目があった。やたらと目が合うから、困った。

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2018年7月20日

 ひび割れた皮膚から血が滲むと、そこから鱗に変わっていく。内から流れ出る血液は私を潤さない。鱗で覆われた人差し指はすっかり蛇になってしまう。ひっそりと目を開く。流れる涙も私を潤さない。ずっと止まない強い雨が甘露だと蛇は気 […]

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2018年7月11日

 星間連絡船の中ではぐれてしまったぺぺが見つかったのは三年後だった。港からの通信でハコダテ星かアオモリ星かと飛び出そうとしたら、コウチ星だという。なぜそんなところに。驚くやら呆れるやら。一番はもちろん安心で、家族みんなで […]

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2018年7月3日

 母は男に逃げられるたび、「あんたの父親は王子様みたいな人だった」と話した。幼いころは目を輝かせていたが、段々聞き流すようになった。大人になって戸籍抄本を見たら母の名前しかなく、認知もされなかったんだなと少し傷ついた。  […]

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2018年7月3日

 通学電車でよく乗り合わせるスーツ姿の男性は、名刺の角でちくちくと刺されている。誰だかわからない手が後ろから伸びて、首筋に名刺を当てているのだ。 一方、私の首筋には赤いボールペンがちくちくと刺さる。誰が刺しているのかはわ […]

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2018年6月30日

「見ていられるとやりにくいんですけど」 アイシングを混ぜる様子を観察していると、弟子はちらっとこちらを見た。「いいから続けろ」 弟子はボウルを指差す。厨房が暑いのか頬が赤い。レモンの呪文を唱えると、キラキラと星が降って、 […]

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2018年6月14日

さかさまのささかま。さかなのなかま。まさかのささみ。さしみのさみしさ。

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2018年6月3日

 この遺跡からはたくさんの歯が出土しました。全てヒトの乳歯、しかも上の歯でした。長年の謎でしたが、近年、他の遺跡から出土した書物により、上の乳歯が抜けた際に「縁の下」に投げる風習があったことがわかりました。そのことから、 […]

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2018年5月27日

 オレンジ色の球が緑色のテーブルを跳ねる。「白線の内側にお下がりください」「あなたのお姉さんのお下がりください」いいえ、いいえ。打ち返す者もいないオレンジ色の球はころころと転がって、線路に落ちた。いいえ、いいえ。

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2018年5月22日

 欄干から見下ろす池は、蓮の葉が覆い尽くしている。僅かに覗く水面を錦鯉がちらちらと横切る。 私は緋色の襦袢の裾をからげ、欄干を乗り越え、勢いのまま飛び降りた。 蓮葉は私を受け止めることはなく、水音が箱庭の静寂を壊した。  […]

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