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オレンジ宇宙制作室

2018年5月19日

 天井に網を張って、色とりどりのリボンを垂らす。リボンの先には、とっておきのものを吊るした。緑のガラスの小瓶。捨てられたピアノの鍵。かつての白い薔薇。湖色の欠けたティーカップ。丸くて平たい斑ら石。ピラミッドの積み木。砂糖 […]

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2018年5月9日

 左手は暑さに弱いから、夏になる前に取り外して冷蔵庫に保管する。最初の年は間違えて冷凍庫に入れてしまった。そのときにできた指輪の跡は、今も残っている。

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2018年4月28日

 風に落ちた白い小さな蜜柑の花を辿って会いに行く。火の勢いが落ち着いてきたレッドロビンの生垣の道。みずみずしいハナミズキの葉の下。ピンクと白のツツジの階段。大輪の赤い薔薇が咲いたら行き止まり。私に水をくれるのはだあれ?

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2018年4月24日

 夜、冷たい雨が降ってきたら、梅の匂いの角を曲がる。 夜、生温かい雨が降ってきたら、木香薔薇の匂いの角を曲がる。

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2018年4月6日

 オープンテラスの席で、カフェオレを飲む。大きな塊になった埃が、足元でくるくると回っている。引きずられた髪の毛は尻尾。小さな落ち葉は耳だ。チィチィと鳴きながら、席を立った私の後をついてきたから、名前を考えなくてはならない […]

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2018年4月5日

 オオイヌノフグリの花を、ひとつひとつ摘み取って、方眼紙に並べる。微妙な色の違いで、離れて見ると霞がかった空のようだ。紙全体が小さな花で覆われたところで、丸めて捨てる。

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2018年4月1日

 切り損ねて一本だけ長い左足の親指の爪が春に触れると、そこから私が解けていく。糸になった私は桜の花びらを巻き込みながら、風でくしゃくしゃに丸まって転がっている。

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2018年3月19日

 扉の上の路線図を辿って想像の海へ行く。ひたすら斜め上ばかり見ていると瀕死の魚みたい。そう思ったらおもしろくなる。少し生き返った。

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2018年3月14日

 東京も雪が溶け、地下鉄のあちこちで漏水が始まった。

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2018年1月31日

 最中の中身は空だった。「粒あん! 粒あんはどこだ!?」 大声で呼ぶが返答はなかった。代わりに女中が戸口に現れる。「旦那様。奥様はお出かけになりました。お戻りは年明けになるそうです」「どういうことだ! 粒あんはどこにいっ […]

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