「あ、ライン来たよ」　ユリが天を指す。「縄じゃん」「マジ太すぎ。どんだけ目立たせたいんだって」　私の前に垂れ下がっているのは注連縄みたいなラインだった。先端にカナのアイコンが付いている。それを引いてメッセージを受け取ると […]

More >

　おじいさんの尾とおじさんの尾は違う。おじいさんの尾とおとうさんの尾は同じだから、おとうさんの尾とおじさんの尾も違う。「兄弟なのに、なんで違うの？」　そう聞くと、おじさんは「秘密だぞ」と耳打ちしてくれた。「おじさんはおと […]

More >

　紙を縦に引き裂いて、のこぎりにする。首と名前の付く全てを順に見て、手首に決める。　のこぎりを手首に押し当て、ぐるっと巻く。長針と短針を書くと、夜が始まった。

More >

　星空の下を歩く。風が冷たい。昼間より厚着してきて正解だった。ジャケットのポケットに手を入れて、音楽プレーヤーを操作。同じ曲がもう一度流れる。寝静まった住宅地は人の存在を感じさせない。辺りは虫の声に包まれているのに、僕だ […]

More >

　方々を回ってやっと手に入れた木の御札を、白い深皿に載せる。御札の方が皿の直径よりも長いから、橋を渡したようになる。　皿には水を張った。満月が水面に映る。まだ皿のふちに近い位置だ。「もう少しかな」　水面の月が、皿の真ん中 […]

More >