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企画イベントなど投稿作一覧

2020年8月18日

 隣の芝生は青い。夏の空のようで、ときどきのっそりと寝そべっているサモエドは入道雲に見える。 折よく隣家の主人が庭にいるときに顔を合わせたから、何を撒いているのか尋ねてみた。「レモンスカッシュですよ」「なるほどなるほど」 […]

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2020年2月5日

 長閑なはずの森が荒らされていた。金属がぶつかる音。人の声。魔女の眷属となった猫には、時折、木々の叫びも聞こえた。 魔女が気付いたときにはすでに家は武装した兵士に囲まれていた。扉に鍵をかけ、防御の魔法を施すだけで精一杯。 […]

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2019年11月25日

 校歌の一番に必ず「富士」と入っている地域で生まれ育った私だけれど、その大きさを実感したのは、二百キロ以上離れた筑波山から富士山を見たときだった。以来、どこに行っても富士山を探すのがくせになっている。台風一過の今朝は、カ […]

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2019年10月22日

 塀の上を三毛猫が歩いていた。黒の部分が多めの三毛猫だ。 寝静まった街。人の気配はない。虫の声だけが途切れずに夜を彩っていた。 ふと甘い香りが鼻を掠め、猫は立ち止まる。そこにぱらぱらと小さな花が降ってきた。金木犀だ。辺り […]

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2019年10月1日

 波の音をベースに懐かしい歌を口ずさみながら、防波堤を歩く。忘れてしまった英語の歌詞を適当にごまかしたら、メロディもわからなくなった。 謎の虫を踏まないようにして、大きくひらけた海に向かって仁王立ちする。 白波の打つ水面 […]

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2019年8月26日

 左頬にできた吹き出物は、つぶれ方が悪かったのか、かさぶたを経てシミになってしまった。 鏡で確認すると、小指の先ほどの皮膚が茶色く変色している。 ある日、ふと触れたらするりと滑らかな感触がした。首を傾げつつ、もう一度指先 […]

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2018年7月21日

 結婚記念の置き時計が動かなくなった。 天使が二人がかりで掲げているアンティーク調の時計を彼女はとても気に入っていて、「壊さないようにしようね」と言っていた。それが動かなくなったと知ったらがっかりするだろう。彼女が帰って […]

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2018年7月3日

 母は男に逃げられるたび、「あんたの父親は王子様みたいな人だった」と話した。幼いころは目を輝かせていたが、段々聞き流すようになった。大人になって戸籍抄本を見たら母の名前しかなく、認知もされなかったんだなと少し傷ついた。  […]

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2018年7月3日

 通学電車でよく乗り合わせるスーツ姿の男性は、名刺の角でちくちくと刺されている。誰だかわからない手が後ろから伸びて、首筋に名刺を当てているのだ。 一方、私の首筋には赤いボールペンがちくちくと刺さる。誰が刺しているのかはわ […]

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2018年6月30日

「見ていられるとやりにくいんですけど」 アイシングを混ぜる様子を観察していると、弟子はちらっとこちらを見た。「いいから続けろ」 弟子はボウルを指差す。厨房が暑いのか頬が赤い。レモンの呪文を唱えると、キラキラと星が降って、 […]

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