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製品カタログ22「息の根」収録作一覧

2018年10月5日

 穴の空いた傘を街灯がプラネタリウムに変える。雨粒の軌跡は流星の尾。銀砂を散らしたアスファルト。いつもと違う歩道の、暗がりに潜む私。

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2018年8月1日

 身体は、朝に上って夜には下る。 心は、朝に昇って夜には沈む。 歪な私は、朝に登れず夜には落ちる。

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2018年7月24日

 スイッチを押すと、全部のカードが裏返る。何度も繰り返すと、段々と時間差ができていく。一番素早いカードは少しずつ浮いてくるから、それをお守りにして眠りにつく。夜が沈まないように。

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2018年7月20日

 ひび割れた皮膚から血が滲むと、そこから鱗に変わっていく。内から流れ出る血液は私を潤さない。鱗で覆われた人差し指はすっかり蛇になってしまう。ひっそりと目を開く。流れる涙も私を潤さない。ずっと止まない強い雨が甘露だと蛇は気 […]

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2018年7月3日

 母は男に逃げられるたび、「あんたの父親は王子様みたいな人だった」と話した。幼いころは目を輝かせていたが、段々聞き流すようになった。大人になって戸籍抄本を見たら母の名前しかなく、認知もされなかったんだなと少し傷ついた。  […]

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2018年7月3日

 通学電車でよく乗り合わせるスーツ姿の男性は、名刺の角でちくちくと刺されている。誰だかわからない手が後ろから伸びて、首筋に名刺を当てているのだ。 一方、私の首筋には赤いボールペンがちくちくと刺さる。誰が刺しているのかはわ […]

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2018年5月27日

 オレンジ色の球が緑色のテーブルを跳ねる。「白線の内側にお下がりください」「あなたのお姉さんのお下がりください」いいえ、いいえ。打ち返す者もいないオレンジ色の球はころころと転がって、線路に落ちた。いいえ、いいえ。

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2018年5月22日

 欄干から見下ろす池は、蓮の葉が覆い尽くしている。僅かに覗く水面を錦鯉がちらちらと横切る。 私は緋色の襦袢の裾をからげ、欄干を乗り越え、勢いのまま飛び降りた。 蓮葉は私を受け止めることはなく、水音が箱庭の静寂を壊した。  […]

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2018年5月19日

 天井に網を張って、色とりどりのリボンを垂らす。リボンの先には、とっておきのものを吊るした。緑のガラスの小瓶。捨てられたピアノの鍵。かつての白い薔薇。湖色の欠けたティーカップ。丸くて平たい斑ら石。ピラミッドの積み木。砂糖 […]

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2018年5月9日

 左手は暑さに弱いから、夏になる前に取り外して冷蔵庫に保管する。最初の年は間違えて冷凍庫に入れてしまった。そのときにできた指輪の跡は、今も残っている。

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