OPEN MENU
CLOSE MENU

HOME > オレンジ宇宙制作室

オレンジ宇宙制作室

2009年9月4日

 一階の北側の部屋はひんやりしていた。昼間なのに薄暗い。窓はあるにはあるのだが、隣家との境のブロック塀が迫っていた。古い地下道のイメージが浮かぶ。「日当たり悪いですね」 そう言うと、不動産屋はすみませんと全く心のこもって […]

More >

2009年8月8日

 右足が重い。見ると、薄灰色のねっとりしたものが絡み付いていた。何だろう。見たことがない。生物なのかどうかもわからない。危険なものではないといいのだが、と考えながらトングで取ろうとした。「ひどい!」 通りかかった女性が僕 […]

More >

2009年8月8日

 見上げると鍾乳石のようにビルが垂れ下がっている。ビルの根元には道路が通っている。こちらの東京とそっくり同じ東京が鏡に映したように上にも広がっている。いつこうなったのか分からない。 隣りを歩く彼がふわりと宙に浮く。慌てて […]

More >

2009年8月3日

 最後の夕日が沈もうとしていた。空と雲を染め上げ、静かにゆるゆると燃えていた。 この夕日が沈んでしまえばもう二度と太陽は昇らない。今日が終わっても明日は来ない。そう予言されていた。 偉大な魔法使いはそれを食い止めるために […]

More >

2009年7月29日

 雨が止んだのに気付き傘を閉じると、正面の空に虹を見つけた。 慌ててカバンを探り、携帯電話を取り出す。 カメラを構えようとしたら、隣りでカシャと音がして、虹は消えた。一瞬遅かった。 隣りを見ると、虹をとったスーツ姿のおじ […]

More >

2009年6月7日

 三階の一番右の部屋、と彼女は建物を指差す。初めて来た彼女のマンション。見上げると、どのベランダにもパラボラアンテナが取り付けられている。「皆、アンテナつけてるんだね」「ね、おかしいでしょ?」 彼女はふふっと小さく笑って […]

More >

2009年4月9日

 緑茶にレモンを混ぜて絵の具を作り絵を描いた。初夏の絵だ。なかなかよく描けたと思ったので、友人に送った。受け取った友人から、僕の絵を飾ったせいで洗濯物が乾かなくて困ると苦情が来た。どういうことだろうと見に行くと、季節が移 […]

More >

2009年4月2日

 真っ暗な台所。大きく開いた冷蔵庫だけが明るい。そっとカニかまぼこをつまみ出し、ちゅるんと吸い込む。「何やってるの?」 起きてきた妻が台所の電気をつける。明るくしては台無しだ。しかしここで怒鳴ったりしては、私の秘密がばれ […]

More >

2009年3月12日

 宇宙船に乗って兄の遺骨を拾いに来た。 宇宙生まれの人の骨は宇宙に還ってしまう。他の骨はどこかに行ってしまうのに、頭蓋骨だけは一箇所に集まる。頭蓋骨の吹き溜まりだ。 宇宙船には私の他にも十数人が乗っている。皆、誰かの骨を […]

More >

2009年3月12日

「ねぇ、まだ見つからないの?」 彼女の声が直接頭に届いた。振り返ると、彼女は形の崩れた頭を両手で支えて、フェンスに寄りかかって座っている。「まだに決まってんだろ」 ここは骨男爵の庭と言われる広い草原。このどこかに骨男爵の […]

More >

1 34 35 36 37 38 42
豆本掲載作
その他の印刷物・雑貨掲載作

長編・連載モノなどは「カクヨム」に掲載しています。

ページの先頭へ戻る