一階の北側の部屋はひんやりしていた。昼間なのに薄暗い。窓はあるにはあるのだが、隣家との境のブロック塀が迫っていた。古い地下道のイメージが浮かぶ。
「日当たり悪いですね」
そう言うと、不動産屋はすみませんと全く心のこもっていない態度で謝って、
「でもキノコ栽培には最適ですよ」
僕と妻は顔を見合わせる。笑いもしない僕らに不動産屋は慌てて、すみませんと軽く付け足した。
「なんで分かったのかしら」
帰宅して、夕食の席で妻が首を傾げる。
「だよなぁ。今日はキノコの話してないのに」
僕も同意して、廊下から収穫したシイタケをホットプレートに載せた。