隣の芝生は青い。夏の空のようで、ときどきのっそりと寝そべっているサモエドは入道雲に見える。
折よく隣家の主人が庭にいるときに顔を合わせたから、何を撒いているのか尋ねてみた。
「レモンスカッシュですよ」
「なるほどなるほど」
青春の色というわけだ。
お宅は何を、と聞き返される。
「珈琲なんです。豆から挽いてまして」
「ほう、確かに渋い良い色合いですな」
「それが、最近娘が泡立てた牛乳ですかね、フォームミルク? そんなものを撒きだしまして」
困ったものです、と私は庭の一角を指さす。
「ラテアートというらしいんですが」
芝生に何やら絵が浮き出てきているのだ。
「珈琲の超短編」投稿作
選外
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