OPEN MENU
CLOSE MENU

HOME > オレンジ宇宙制作室 > 私の鱗

私の鱗

 左頬にできた吹き出物は、つぶれ方が悪かったのか、かさぶたを経てシミになってしまった。
 鏡で確認すると、小指の先ほどの皮膚が茶色く変色している。
 ある日、ふと触れたらするりと滑らかな感触がした。首を傾げつつ、もう一度指先でなぞる。少し硬くて、つるつるしている。
 またかさぶたになったのだろうかと鏡を見たけれど、普通のシミだった。触って確かめても普通の皮膚だ。
 そのときは気のせいかなと思った。しかし、それが何度も起こった。
 鏡で見てもシミなのに、無意識に触れたときだけ、硬くて滑らかな……何だろう? 周囲の皮膚より少し盛り上がっている。感触は爪に似ている。でもこれはきっと鱗だ。
 私の鱗。
 そう考えると愛着が湧いてきた。
 鱗になる頻度はだんだん高くなっている。魚かトカゲか、私は何になるのだろう。

2019/06/30
テキレボ9のWebアンソロジー「imagine」への投稿作

豆本掲載作
その他の印刷物・雑貨掲載作

長編・連載モノなどは「カクヨム」に掲載しています。

ページの先頭へ戻る