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オレンジ宇宙制作室

2019年10月22日

 塀の上を三毛猫が歩いていた。黒の部分が多めの三毛猫だ。 寝静まった街。人の気配はない。虫の声だけが途切れずに夜を彩っていた。 ふと甘い香りが鼻を掠め、猫は立ち止まる。そこにぱらぱらと小さな花が降ってきた。金木犀だ。辺り […]

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2019年10月12日

 今年も十月を踏んづけた。その足元からぶわりと湧き起こった雲は、ぐるぐると渦を巻いて空に上がった。見上げる間もなく、雲は私の左手の甲に吸い込まれ、目になる。ラメ入りのアイシャドー、紺色のアイライン、これでもかとマスカラを […]

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2019年10月1日

 昨年偶然再会した男から連絡がきた。あれから私は数ヶ月に一度のペースでお店に行くようになっていた。彼のオムライスはやっぱり絶品なのだ。「明日、うちに来るか?」「え?」 聞き返すと、彼は慌てて付け加えた。「間違えた。うちの […]

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2019年10月1日

 波の音をベースに懐かしい歌を口ずさみながら、防波堤を歩く。忘れてしまった英語の歌詞を適当にごまかしたら、メロディもわからなくなった。 謎の虫を踏まないようにして、大きくひらけた海に向かって仁王立ちする。 白波の打つ水面 […]

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2019年9月19日

「まずはこちらがフロッピーディスクです。保存のアイコンで有名ですね」「あ、上のあれってラベルシールだったんですね」「はい、そうなんです。ちなみにこちらがMOディスクです」「分厚い!」「続いてこちらは、写真のアイコンでおな […]

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2019年8月26日

 左頬にできた吹き出物は、つぶれ方が悪かったのか、かさぶたを経てシミになってしまった。 鏡で確認すると、小指の先ほどの皮膚が茶色く変色している。 ある日、ふと触れたらするりと滑らかな感触がした。首を傾げつつ、もう一度指先 […]

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2019年8月25日

 家に帰るなり、言葉にならないことを叫んで、カバンを投げた。ゴムを引き抜いて髪を解くと、ピアスを外すのが面倒になって耳ごと外す。そうしたらヤケクソになって、右腕を引っ張り、両足を蹴り飛ばして、左腕はドアに引っ掛けて、自分 […]

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2019年7月20日

「遅刻の言い訳、ありますか?」「お仕事ですか? プライベートですか?」「友人との待ち合わせです。けっこう頻繁に会うので、もうストックがなくて」「そうですねー、こちらなんてどうです?」「あ! この生産者さん、前にも買ったこ […]

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2019年7月15日

「渋谷に塔が建ったんだって! 一晩で、突然!」「へー、何のプロモーション?」 私の興奮に反して、義理の息子の博己はスマホから顔もあげないまま聞いた。「宣伝じゃないみたい。誰がどうやって何のために建てたか、全然わからないっ […]

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2019年6月27日

「このミートソース、缶詰なの?」「いいですか。市販のソースやタレや素は、UIライブラリです。あなたは毎回datepickerを自作しますか? しませんよね。おいしいライブラリがあるのに私がミートソースを自作する工数は必要 […]

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