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都民の日

 昨年偶然再会した男から連絡がきた。あれから私は数ヶ月に一度のペースでお店に行くようになっていた。彼のオムライスはやっぱり絶品なのだ。
「明日、うちに来るか?」
「え?」
 聞き返すと、彼は慌てて付け加えた。
「間違えた。うちの店、うちの店な。……うちでも全然構わないけど」
「そうじゃなくてさ。なんで明日? 火曜日だよ?」
 彼の店は隣の県だ。ランチタイムはもちろん会社帰りに寄れる距離ではない。
「明日は都民の日だろ?」
「へー、そうなんだ」
 気にしたことがなかった。
「会社は関係ないよ。普通に仕事」
「あ、そうだよな。悪い。ほら、マコトがさ、おねえさんは都民だから休みだよって言うからさ」
「小学生は休みだろうねー」
 私は彼の甥っ子の顔を思い出して、苦笑する。
「しばらく来てないからマコトが会いたがってたぞ。……あ、もちろん俺も」
 電話のせいか、彼の言葉は最後の方が毎回よく聞き取れない。
「じゃ、体育の日に行くからって、マコト君に伝えておいてよ」
 そろそろオムライスも食べたいし。

「県民の日」の続編。

2019年10月1日
豆本掲載作
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長編・連載モノなどは「カクヨム」に掲載しています。

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