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オレンジ宇宙制作室

2020年5月12日

 ひとつだけ選んだのはディンプルキーだ。爪先立ちで枝を引き寄せ、鍵を何度か捻ると、ぽきりと軽い音を立てて外れた。 冷たく硬い、よく熟した鍵だ。銀色に輝いている。手に取って構えてみると、誂えたようにしっくりなじんだ。「名を […]

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2020年4月22日

 天井から伸びてきた蔓が、床に絵を描く。 草原に赤い花。ひらひらと揺れるひれ。 蔓は私の足に絡み、絵の上に引きずっていく。 赤い丸い花で囲まれた私。 同じ色を唇に塗って、蔓は天井に帰っていった。 寝転んだまま見上げた天井 […]

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2020年3月31日

顔なじみの猫とすれ違ったとき、しっぽが触れただけで温かさと重さを思い出す夢。午前六時少し前。

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2020年2月15日

 エスカレーターの手前で呼び止められた。「あの、お一人ですか? 一緒に乗ってもいいですか?」「は?」 怪訝な顔を向けると、相手は足元を指差した。床に貼られたシートには注意書きがあった。『安全のため、歩かずに2列でお乗りく […]

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2020年2月11日

切り分けた端からきらきらの粉になり、記憶はどこまでもまとわりついてくる。

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2020年2月5日

 長閑なはずの森が荒らされていた。金属がぶつかる音。人の声。魔女の眷属となった猫には、時折、木々の叫びも聞こえた。 魔女が気付いたときにはすでに家は武装した兵士に囲まれていた。扉に鍵をかけ、防御の魔法を施すだけで精一杯。 […]

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2020年1月28日

「と」を書く途中で力尽きたダイイングメッセージみたいな刺繍。

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2019年12月8日

 靴下が消えた。 二足セットの新しい靴下だ。リビングで開封して、寝室に持って行ったときにはすでに一足だけになっていた。 自分の動作を思い出しながらリビングまで戻ったけれど、廊下には何も落ちていなかった。大した距離ではない […]

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2019年12月5日

 帰り道、いつのまにか暗くなったことに気づいて見上げると、空には無数の光が瞬いていた。白、金、青や赤まで、とてもカラフルだ。「見て」 隣を歩く彼の腕を引いて、二人で足を止めた。「夜景かな」「きれい」 見ているうちに、光は […]

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2019年11月25日

 校歌の一番に必ず「富士」と入っている地域で生まれ育った私だけれど、その大きさを実感したのは、二百キロ以上離れた筑波山から富士山を見たときだった。以来、どこに行っても富士山を探すのがくせになっている。台風一過の今朝は、カ […]

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