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製品カタログ22「息の根」収録作一覧

2018年4月28日

 風に落ちた白い小さな蜜柑の花を辿って会いに行く。火の勢いが落ち着いてきたレッドロビンの生垣の道。みずみずしいハナミズキの葉の下。ピンクと白のツツジの階段。大輪の赤い薔薇が咲いたら行き止まり。私に水をくれるのはだあれ?

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2018年4月24日

 夜、冷たい雨が降ってきたら、梅の匂いの角を曲がる。 夜、生温かい雨が降ってきたら、木香薔薇の匂いの角を曲がる。

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2018年4月6日

 オープンテラスの席で、カフェオレを飲む。大きな塊になった埃が、足元でくるくると回っている。引きずられた髪の毛は尻尾。小さな落ち葉は耳だ。チィチィと鳴きながら、席を立った私の後をついてきたから、名前を考えなくてはならない […]

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2018年4月5日

 オオイヌノフグリの花を、ひとつひとつ摘み取って、方眼紙に並べる。微妙な色の違いで、離れて見ると霞がかった空のようだ。紙全体が小さな花で覆われたところで、丸めて捨てる。

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2018年4月1日

 切り損ねて一本だけ長い左足の親指の爪が春に触れると、そこから私が解けていく。糸になった私は桜の花びらを巻き込みながら、風でくしゃくしゃに丸まって転がっている。

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2018年3月14日

 東京も雪が溶け、地下鉄のあちこちで漏水が始まった。

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2017年12月24日

 何層にも分かれた彼女を私は監視している。下層の彼女たちは静かな眠りについたけれど、上層の彼女たちは咳を繰り返してうなされている。発酵で発生した気体が一番上の彼女を持ち上げ、下の彼女たちもつられてしまう。私はそれをそっと […]

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2017年12月9日

 電極を刺して、骨を温める。熱が伝わり、凍っていた筋肉が溶け始める。皮膚が流れるより前に止めなくてはならないのが難しいところだ。

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2017年12月5日

 とても綺麗な芋虫だった。小指ほどの大きさの白い芋虫。薄い皮から透けた桃色が、歩く動きに合わせて揺らめき、オーロラのようだった。頭の先を指でつつくと、ひゅっと縮むのもかわいらしい。 きっと綺麗な蝶々になるのだと思う。そう […]

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2017年11月3日

 雪の結晶を、三度。回しながら刻みつけると、私の中心は繊維状になった。そっと取り出す。少し黄ばんだそれは、ヘチマのスポンジのようだった。片手で握り、ぎゅっと絞る。溢れ出たものは、かつて球体だった何か。今はもうぐずぐずに崩 […]

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