四階でエレベーターに乗る。閉めるボタンを押す。数秒後ドアが開く。まだ四階。

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　カバンから波の音が聞こえた。そっと開くと、財布とポーチの間を船が横切って行った。

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「そんなにタイツばっかり買ってどうするの？　ムカデなの？」と冗談のつもりで聞くと、「ごめん、蜘蛛なの」と彼女は答えた。そこでうまく笑えなかったのがよくなかったのかもしれない。その夜別れてから彼女と連絡が取れなくなった。と […]

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　埋まっている手を握る。ぎゅっと力が込められたのが分かったから、思い切り引っ張った。地面から抜け出た手の、手首から下は大根だった。「うまそう」　思わずつぶやくと、器用に指を動かして逃げて行った。

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「金魚飼ってるの」　左手の甲に浮いた血管の、小さく膨らんでいる箇所を指して、彼女はそっと教えてくれた。 豆本「きみがわるい」、修正して収録。

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　手のひらを飛び石のように踏んで歩く。突然足首を掴まれる。倒れる。ふりだしに戻る。

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　黒猫が鳴いている。　縞三毛は寝ている。　高い天井。響く靴音。　自分を見つけたような、見失ったような、夏の午後。

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