ソファの上で寝返りを打つたびに、チョコレートが降ってきたらいいのに。そう思いながらこたつで寝ている夢を見て、起きたら、降りる駅を過ぎている。

More >

　かばんのグローブホルダーに吊り下げた猫が鳴く。みぃみぃみぃと、薄い黒い革の子猫。

More >

　傘が雨漏りするから、バケツも持ち歩いている。

More >

　f字孔で型抜きしたニンジンをそうめんに飾って、爪弾く。強く。振動で雨が降る。

More >

　分解して、掃除して、正確に組み立て直したつもりが、部品が一つ余った。小さな歯車。そのせいで体が重く、何をするにも時間がかかる。どこの部品かわからないから、とりあえず水と一緒に飲んでおいた。明日には元に戻るだろう。 「四 […]

More >

　段々と膨らむ三日月のレモンクリームを人差し指で掬って、唇のクレーターに塗ろうとすると、雨の向こうに隠れてしまった。

More >

　干潮になる深夜、海を歩いて探検に行く。洞窟の奥の蛇の目はオパールで、角度によって色を変える。地底湖にカリフラワーを投げると、しゅわしゅわと溶けて消えた。バニラ味。

More >

　フライパンの蓋を開けると、金のカラーコンタクトの大きな瞳。長いつけまつげを羽ばたかせ、器用にウィンクする。

More >

　葡萄の房に絡みついた髪の毛を、紫色の爪で摘み取る。すると今度は、その髪が手首に巻きつく。細く長い髪はしっかりと編み込まれ、願いが叶うまで離れない。

More >

　死んだ父親から電話がかかってきた。「何？」　私は電話に出るなり、生前と同じに、短くそれだけ聞く。「元気かと思って・・・」「ああそう。で？」「いや、うん・・・じゃあ・・・」　もごもごと何か言っていたが、電話は切れた。

More >