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花当て

 彼は暗赤色の花びらを舐めとると、おいしそうに目を細めた。
「いちご? ラズベリー?」
「いや、トマトケチャップ」
「えー、そっち系もあるの?」
「みたいだな」
 私が言うと彼は軽くうなずいて、解答用紙に書き込む。
 私は配られた問題シートから、真っ黒い花びらをつまんで舌に乗せた。その瞬間、ピリッと痺れて、気を失うかと思った。
「うっ!」
「え、何? 大丈夫か?」
 何杯も水を飲んで、口の中が少し落ち着いたところで、私はため息をついた。
「イカスミを期待したら黒コショウだった」

2016年4月7日
豆本掲載作
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長編・連載モノなどは「カクヨム」に掲載しています。

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