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瀕死の私

 体力が続かなくなってきたので、新しい体を買いに来た。
「最新型は予約になりますが、よろしいですか?」
「どのくらい待ちますか?」
「早くても二週間くらい、長くて一か月ですかね」
「そんなにかかるんですか? 私、もう瀕死なんです」
 三年ほど前の型の私を、店員は気の毒そうに見る。
「まあ、見た目と記憶力にこだわらなければ、もう少し早くご用意できるタイプもありますよ」
 それは人気がないってことですか、という言葉は発せられることはなく、私はばたりとその場に倒れた。次に目が覚めたのは十日後。私の体は新しくなっていた。店員は親切というか、商魂たくましいというか、勝手に注文して取り替えてくれたらしい。
「気に入らなかったら他のをご用意しますよ」
「それも予約なんですよね?」
「ええ、もちろん」
 笑顔でうなずかれ、私は諦めてこの体で暮らすことにした。

2016年11月2日
豆本掲載作
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