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空の地図

 今日は暗くて地図がよく見えない。どんよりした曇り空を背景に、自分の現在地を表す赤い丸印だけがぽつんと浮かんでいる。このままでは完全に迷子だ。
 困って見渡すと、右側から青い三角形が近付いてきた。私はさっそく声をかける。事情を説明すると、怪訝な声が返ってきた。
「地図が見にくい? 何色に設定してるんですか?」
「え、色変えられるんですか?」
「ええ。ちょっと触っても?」
「はい」
 うなずくと、隣からベッドを降りる音がした。私も降りようとすると、「そのまま寝ていてください」と止められる。通話システムを経由せずに直接聞こえた声は男性だった。
 ピッピッと操作音が鳴り、メニュー画面が映る。私のベッドの操作パネルを弄ってくれているのだろう。
「ちょっとわかりづらいんですよね。ほら、このカラーってところですよ」
 ぱあっと視界に地図が広がる。一気に明るくなった。今まで鈍色だった線が、白に変わったのだ。
「わぁ! すごい!」
「でしょう?」
 彼の言葉がなんとなく誇らしげに聞こえて、私はくすりと笑う。
 明るく輝く街角に、赤い丸と青い三角が並んでいた。

2016年10月30日
豆本掲載作
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