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透明な人たち

 カフェのガラス越しに、向こうのビルのエスカレーターが延々動き続けているのが見える。いちおう世間では連休の二日目、土曜のオフィスビル。乗っている人は一人もいない。私には見えないだけかもしれない。透明な人たちがエスカレーターに乗って出勤していく。透明な会社で透明な仕事をして、透明な退社時刻に透明な家に帰る。透明な私は、透明なカフェラテを飲み干して、透明なカフェを出る。透明な地下鉄に乗って、透明な海へ行くのだ。

2016年4月30日
豆本掲載作
その他の印刷物・雑貨掲載作

長編・連載モノなどは「カクヨム」に掲載しています。

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