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生きている肉

 死んでいる肉は怖くない。彼らは私たちを害することはないからだ。
 生きている肉は恐ろしい。みずみずしい薄桃色は、常にこちらの隙をうかがっている。じわじわと体液を滲ませ、密かに呼吸している。うっかり触れようものなら、決して逃さず、新しい皮膚で覆って自らの中に取り込んでしまう。
 私もそうやって捕らえられてしまった。もうどこまでが自分だったのかわからないくらい、肉の一部になっている。
 渇いた組織が体液で満たされる。酸素が回る。細胞が震える。色が変わる。私が生き返っていく。いや、これはすでに私ではない。私を食べ終えた生きている肉は、獲物を探すため、また皮膚を開いた。

2016年3月27日
豆本掲載作
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長編・連載モノなどは「カクヨム」に掲載しています。

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