深夜に目が覚めて水を飲んでいるとお父さんが起きてきました。
「お前に妹を作ってやろう。お前も手伝うんだ」
今までに見たこともない怖い顔でお父さんは台所に入ってきます。びっくりして動けないあたしをお父さんは床に座らせて、その前に大きな白い布を敷きました。
それからお父さんは、小麦粉と牛乳を順番に大きなボウルに入れ、手で練っていきます。あたしは座ってただ見ていました。大きな手が粉と牛乳でベタベタになりました。力強く混ぜていくうちに、生地がまとまってどんどんなめらかになっていきます。お父さんの額から汗が流れ、生地に一滴混ざりました。お父さんが力を込めるたびに生地は白く輝いていきます。
「お前は顔を作りなさい」
お父さんはあたしにリンゴくらいの大きさの生地をくれました。お父さんは残りの生地から体を作るようです。白い布の上に載せた塊をお父さんのごつごつした指がなぞり、妹の形ができていきます。
いつも笑顔のお父さんが今夜は一度も笑いません。とても真剣な目で妹を作っています。
あたしを作ったときのお父さんはどんな顔をしていたんだろう。
そう考えながら作ったからでしょうか、妹の顔は父親似です。
第71回タイトル競作【選評】○○○○○○△(正選王)