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良いクラッカー

良いクラッカー

 バスを待っていると、肩を叩かれる。振り返ると、うさぎ。白の。二本足で立つ背丈は私と同じくらい。
「一本選べ」
 うさぎは糸の束を差し出す。無表情で怖い。
「さあ選べ」
 ぐいっと目の前に手を突きつけられて、反論できず、私は糸を一本つまんだ。
「それか! そうきたか! よし。しっかり持ってろよ。ぎゅっとだ。いいか?」
 うさぎは私の目を覗き込む。怖い。私は糸をぎゅっと握った。
「いいか?」
 私はうなずく。
 うさぎは後ろにジャンプ。
 束の元はうさぎが持っていたから、私の握った糸はひっぱられる。
 っぱーん!
 破裂音が響いて、うさぎはぼーんと飛んでいった。
 紙ふぶきが舞う中、バスが来る。私は乗り込む。今日は良いことがあるような気がする。

豆本「超短編豆本 柊ノ巻」収録

鳴らない(あるいは良くないクラッカー)

 バスを待っていると、肩を叩かれる。振り返ると、うさぎ。白の。二本足で立つ背丈は私と同じくらい。
「一本選べ」
 うさぎは糸の束を差し出す。無表情で怖い。
「さあ選べ」
 ぐいっと目の前に手を突きつけられて、反論できず、私は糸を一本つまんだ。
「それか! そうきたか! よし。しっかり持ってろよ。ぎゅっとだ。いいか?」
 うさぎは私の目を覗き込む。怖い。私は糸をぎゅっと握った。
「いいか?」
 私はうなずく。
 うさぎは後ろにジャンプ。
 束の元はうさぎが持っていたから、私の握った糸はひっぱられる。
 うさぎは歩道の植え込みにどさっと落ちた。
「残念だったな」
 うさぎが言うと、バスが来る。私は乗り込む。今日は良いことがないような気がする。

創作家さんに10個のお題
http://note25page.seesaa.net/article/130126889.html

豆本掲載作
その他の印刷物・雑貨掲載作

長編・連載モノなどは「カクヨム」に掲載しています。

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