小五の時の話。
放課後、委員会の用事で女子と二人で教室に残っていた。プリントを指差すその子の爪がやけにおいしそうな色だった。
「ちょっと、聞いてんの? 何見てんの?」
不機嫌な声。見ていたことをごまかすつもりが、
「あ。えっと。爪、うまそうだと思って」
なぜか正直に言ってしまった。
その子は、あは、と笑って、
「ばれたか。センセーには黙っててよ」
そう言って、一枚剥いで僕にくれた。見た目通りにおいしかった。
その二ヶ月後に彼女は転校してしまって、それ以来会ってはないのだけど、あの色は忘れられない。
創作家さんに10個のお題
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