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夕暮れのお別れ

「もう終わりにしよう」
 そう言って彼女は、僕に手のひらを差し出す。
 僕はうなずいて、彼女の手のひらに「さよなら」を乗せた。
 それは彼女の手のひらから滑り落ち、アスファルトの上で形を変える。
 往生際悪く「いやだよ」に変わった僕の「さよなら」を見て、彼女は僕に「ごめんね」を差し出した。
 僕はそれを受け取って、しっかりとポケットにしまう。
 ふと見上げた茜空には、ナイフで切り裂いたような三日月が出ていた。

2004年12月作 発掘品

2018年10月20日
豆本掲載作
その他の印刷物・雑貨掲載作

長編・連載モノなどは「カクヨム」に掲載しています。

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