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最初のほくろ

 子どものころから足の裏にあるほくろが、消えかかってきていることに気付いた。成長を共にした愛着のあるほくろだ。足の裏のほくろはガンになりやすいと聞いて不安に思ったのも懐かしい。
 伸びて七ミリほどの大きさになっていて、そこにあることを知らなければ気付かないくらいの色合い。ほくろというよりシミと言ったほうが正しいかもしれない。
 じっと見ていると輪郭が動いた。じわじわと広がって、どんどん薄くなる。ああ消えるんだなと思ったら泣きそうになった。見る間にほくろの色は周囲の皮膚に溶け込んでわからなくなってしまった。最期に立ち会うことができたのは偶然だろうか、私が気付くのを待っていてくれたのだろうか。
 何もなくなってしまった足の裏に、アイライナーで点を描いた。そう、初めて見つけたときはこんな感じだった。そのとき私はまだほくろという言葉すら知らなかったのだ。

2014年6月13日
豆本掲載作
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長編・連載モノなどは「カクヨム」に掲載しています。

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