毎朝、玄関ドアの前に大量のカナブンが死んでいる。大小合わせて二十匹を超える。黒いやつも緑色のやつもいる。私は泣きそうになりながら、カナブンの死骸を箒で掃いてまとめ、ビニール袋に入れてすぐさまゴミ捨て場に持って行く。これが六日続いた。
アパートの外廊下を見回しても、私の部屋の前以外には一匹もいないのだ。誰かの嫌がらせならまだましかもしれない。
暗くなると、カツンカツンとカナブンが当たる音がし始める。ドアの上の明かり取りのすりガラスに小さな影がぶつかっているのが見える。部屋の灯りを消しても無駄だった。外が薄明るくなるまでカナブンの音は止まない。
どうしてそんなにまでしてこの部屋に入りたいのだろう。私は真っ暗な中ヘッドフォンで音楽をかけ、必死に眠ろうとする。ベランダに出る窓は五日前からカーテンを開けていない。どうなっているか考えるだけで吐き気がする。これ以上続くとドアも開けられなくなりそうだ。
第116回タイトル競作【選評】◎◎○○○○△×(正選王)