「実は」
「あ、見て」
話を始めようとしたところで、彼女は空を指差した。その指を辿って、カフェのオープンテラスから空を見上げると飛行船が見えた。
「わぁすごい。なんて書いてあるんだろう。見える?」
「俺、目悪いからなぁ」
無邪気に喜ぶ彼女に付き合って、飛行船の文字を必死に読むふりをする。数分も経たずに飛行船はビルの陰に入って見えなくなった。
「行っちゃったね」
残念そうに言う彼女に俺は、
「あのさ」
「あ、また飛行船。ほら、あっちにも」
話を始めようとしたところでまた彼女は空を指差す。
瓢箪堂のお題倉庫
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