今朝、廊下で営業の河野さんとぶつかった。そのときに私の上に浮かんでいる花が受粉してしまったようなのだ。寒気がするし、喉も痛い。花びらは萎れてしまっている。咳が止まらず熱っぽくなってきたから、午後から早退することにした。
私がこんなにつらいのに河野さんは大丈夫なのかと思いながら会社を出ると、通用口の前で河野さんが倒れていた。河野さんの花は枯れかけている。
「大丈夫ですか?」
持っていたペットボトルのお茶を花にかけると、河野さんは目を開けた。
「自力で帰れますか?」
そう聞くと河野さんはかすかに首を横に振った。
「タクシーと花屋、どっちがいいですか?」
「花・・・」
それだけ言って河野さんはまた目を閉じてしまう。花粉が飛びそうな日は家から出ないでほしいよと思いつつ、私は携帯電話で花屋を呼ぶ。新しい花に取り替えたら河野さんも元気になるだろう。ついでに自分のも新しくしてもらおうかな。河野さんのおごりで。
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