巨大な青虫がミドリガメを食べている。
「それ、カメ」
あたしがそう言うと、青虫はちらりとこちらを見た。
「緑だから大丈夫だ」
いいの? とミドリガメを見ると、彼もまだ無事な顔をこちらに向けた。
「緑だから仕方ない」
あたしはそこでふと思ったことを言ってしまった。
「青虫もどっちかっていえば緑だよね」
青虫はぴたりとミドリガメを食べるのをやめた。
「確かに緑だ」
そう言ってうなずく。
それが悲劇の始まりだった。
同人誌「言之葉乃標本箱 其之壱 when the fairy tales fall」収録