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ワルツ

 手を取って、くるくる回りながら、笑い合う。
「君のこと、ずっと前から、知ってる気がするんだ」
「ええ、私も、そう思ってたわ」
 僕らには周りの人たちなんて見えていない。音楽だけは聞き逃さないようにがんばっていた。でももう彼女の声だけに集中したい。
「出よう」
「そうね」
 曲が終わる前に、彼女の手を引いて、ホールを抜け出した。
 テラスから庭に出る。彼女を振り返る。月明かりに黒いドレスが輝いている。
「あら、いやだわ。溶けてる」
 回りすぎたのね、と彼女は笑って、僕を見上げる。
 とろりと溶けたドレスの裾から、黄緑色のペチコートが覗いていて、思わず唾を飲み込む。
 彼女が近付く。僕も近付く。ほろ苦い味がした。

「ケーキの超短編」投稿作
選んだケーキ:ショコラピスターシュ

ショコラピスターシュの優秀作品賞受賞
http://inkfish.txt-nifty.com/diary/2014/11/post-3cef.html

豆本掲載作
その他の印刷物・雑貨掲載作

長編・連載モノなどは「カクヨム」に掲載しています。

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