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ハンド(アンド)ロイド

 飛行機雲に沿って割れた空から現れた大きな青い手が、私の首に縫い付けられた点滴のチューブを引っ張る。ぐんぐんと持ち上げられて、私の足はベランダの床から浮いてしまう。思わず掴んだ風鈴が、かちかちと響かずに鳴る。薄い桐の短冊がポケットから落ちる。引っ張られていない方のチューブから、言葉が流れ落ち、ぽたぽたと首筋を濡らしていく。全部見えないのに、本当は何もないのに、いつまでも、私は空から吊り下げられている。

2016年7月7日
豆本掲載作
その他の印刷物・雑貨掲載作

長編・連載モノなどは「カクヨム」に掲載しています。

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