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スズランラン

 多年草。林の中など薄暗いところを好む。一本の茎に、金色の鈴のような花が十数個並んでつき、花を振ると音が鳴り、楽しくなる。

 子どものころ、里山で一人で遊んでいると、ちりんちりんと音が聞こえた。不思議に思い、クマザサをかき分けて登って行くと、木が途切れて少し開けている場所があった。そこで、祖母が躍っていた。地面がキラキラ光っていて、よく見ると金色の小さな花がいっぱいついた植物が生えている。祖母がその植物を蹴るたびに、ちりんちりんと高い音が鳴った。
「あははははっ!」
 祖母は楽しそうに大声で笑いながら、跳ね回っている。ちりちりちりりん。花が鳴る。
「うわぁははははははは! あははは!」
 髪を乱し、素足を高く上げ、くるくると回る。両手にも花を持ち、マラカスのように振っている。こんな祖母は初めて見た。
 私は呆気にとられていた。
 突然、風がざぁっと吹いて、一斉に花が鳴った。ちりりちりんちりんりんりんりんりんりんりん。花の音が反響して、私は耳を押さえて目を閉じた。
 目を開けると、祖母はいなかった。花もなかった。
 怖くなって走って山を下りた。その晩、祖母は帰って来なかったけれど、家族は皆何も言わなかった。翌朝起きると祖母は普通にいて、朝食の味噌汁のなめこは輝くような金色だった。

「超短編・幻想植物ポケット図鑑」投稿作
http://inkfish.txt-nifty.com/diary/2015/01/post-c2e0.html

結果
http://inkfish.txt-nifty.com/diary/2015/02/post-d051.html

豆本掲載作
その他の印刷物・雑貨掲載作

長編・連載モノなどは「カクヨム」に掲載しています。

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