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可憐な罠

 河原で散歩中、スミレを見つけた。遊歩道の両側はあまり手入れされていないのか、芝生を押しのけて雑草が生い茂っていた。そんな中にスミレが咲いていた。珍しかったから、僕は思わず摘んでしまった。
 突然風が吹いて、タンポポの綿毛が一斉に飛ぶ。こちらに向かって飛んできたから驚いて、よろけた拍子に草地の方に転んでしまった。体を起こすと、カラスノエンドウが足首に絡まりついていることに気付いた。外そうとしたら手首にも絡まった。ロープで縛られているようにきつく締まり外せない。
「あのう、大丈夫ですか?」
 転がってもがいていると声をかけられた。首をひねって見上げると、ジョギング中の女性だった。
「草が取れなくて」
「え? 草が?」
 彼女は驚いて、僕の手足を見る。
「大変!」
 慌てた様子で僕の横にしゃがんだ。彼女が引きちぎるとカラスノエンドウはあっさり外れた。
 そのことが縁で僕らは付き合いはじめ、来月結婚する。出会ったときの話をするたび、彼女が申し訳なさそうな顔をするのが少し気がかりではある。

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