角を曲がると知らない景色だった。見たことのない店が道の両側に並んでいる。
間違えたな、と思った。
いつ間違えたのかがわからない。角を曲がるまでは合っていたのか、それより前から間違えていたのか。そもそも最初は合っていたのだろうか。地下鉄を降りる駅からして間違っていたのではないか。いや、何と比べて、合っている間違っていると判断しているのだろう。目的地なんて最初からなかったんじゃないだろうか。
突然、左手の店のドアが開いた。出てきた女が私を見つけて手を振る。見たことのない顔だ。
「あら、久しぶり。どうしたの? そんなところで」
女はドアを大きく開いて、私を招く。
「さ、入ってよ」
間違えたと思ったのは間違いだったか。
私は、久しぶり、と答え、見たことのない店のドアをくぐった。
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