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明日は美味しい

 バスを待っていると、肩を叩かれる。振り返ると、うさぎ。白の。二本足で立つ背丈は私と同じくらい。いつものうさぎだと思ったら、その口が突然大きく開き、私は一瞬で飲み込まれてしまった。傘は何の役にも立たなかった。
「嘘? ちょっと! 出してよ!」
 辺りは真っ暗だ。口の中なのか胃の中なのかわからないけれど、周囲は柔らかく、ぐにょぐにょと動いている。立ち上がることができない。どちらが上なのかもわからない。手当たり次第に殴ったり蹴ったりして、大声で叫んでいると、腕を掴まれた。引っ張られて、私はやっと立ち上がる。振り返ると、うさぎ。白の。二本足で立つ背丈は私と同じくらい。
 目の前には車道。私はバスを待っている。
「え?」
「まだ美味しくなかった」
「は?」
「残念だ」
 うさぎが言うと、バスが来る。私は乗り込む。明日はどうしたらいいだろうかと考える。

創作家さんに10個のお題
http://note25page.seesaa.net/article/130126889.html

2010年1月16日
豆本掲載作
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長編・連載モノなどは「カクヨム」に掲載しています。

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