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夕暮れ探し

 夕暮れが見つからないからいつまでも昼だ。
「ねぇまだ見つからないの?」
 彼女は不機嫌な声で言った。僕の隣りを黙って歩いていたから、もちろん彼女も夕暮れを探してくれているのだと思っていた。
「疲れた?」
「疲れないと思う? でも、まだ昼なのに帰るわけにいかないじゃない」
 彼女は夕暮れが見つかったら帰るつもりだったらしい。僕はがっかりした。ため息まじりに言う。
「それだったら、君も探すの手伝ってくれたらいいのに」
「そういえば、そうね」
 彼女は一度瞬きをしてから、うなずいた。僕は今さっき見つけてしまった夕暮れを右足で踏んで、これからどうするべきか必死で考えている。

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