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HOME > オレンジ宇宙制作室 > 続きはまた今度

続きはまた今度

 物語の途中で母親の声が途切れ、少女はベッドから体を起こす。見ると母親は椅子に腰掛けたまま眠ってしまっていた。
「お母さん?」
 少女は控えめに声をかけたが、母親は起きない。今度は大きめに呼んだ。
「お母さん! 続きは?」
「続き、知りたいか?」
 答えたのは母親ではなかった。少女の祖母よりももっとずっと年をとった老婆の声だった。
「お話の続きを知りたいのかい?」
「誰? どこにいるの?」
 声は聞こえるのに、姿は見えない。少女は見慣れた自分の部屋をきょろきょろと見回した。
「お前、続きが知りたいんじゃないかい?」
 声は同じことを繰り返すだけで、少女の問いには答えない。
「これからどうなるのか、知りたくないのかい? お前は、続きを知らないままでいいのかい?」
「えー……」
「それなら、続きを知りたいかい?」
「知りたい」
「じゃあ、おいで」
 少女がうなずくと、明るかった部屋が急に真っ暗になった。
 ところで、お前もこの続きが知りたいか?

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