彼は資料室で倒れた。駆けつけたときにはすでに虫の息だった。私が声をかけると彼はうっすらと目をあけ、私の腕をぎゅっと掴んだ。
「やわらかい骨」
それだけを搾り出すように言い残し、彼は意識を失った。そして、そのまま二度と意識を取り戻すことはなかった。
私は彼の最後の言葉が気になった。私達がずっと研究していたことに関して、彼は何か発見をしていたのかもしれない。彼は私にそれを託したのだ。他の誰かにその発見を横取りされてはたまらない。彼の言葉は誰にも言わないことに決めた。
それから私は資料室の資料を片っ端から読んだ。彼の家や研究室を調べ、彼の行った場所も分かる範囲で調べた。寝食を削って調べた。彼の遺志を継ぐことができるのは私しかいないのだ。必死だった。そして私も倒れた。
駆けつけた後輩に私は彼の言葉を伝えた。
「やわらかい骨」
「それは確か……」
彼とも親交のあった後輩が目を見開くのが、白くかすむ視界にぼんやり写った。後輩の声が遠くなる。
「マカロニがどうかしたんですか?」
そういえば彼はマカロニが大好きだった。向こうで会ったらまずは一発殴ってやろうと私は決めた。それから後は覚えていない。